まだわからないことが多いですが、分かる範囲でまとめてみました

この時期の晴天の朝日岳です
紅葉が綺麗で多くの方が訪れる日本百名山の一座です
なぜこの日、那須岳が登山者に牙を向いたのでしょうか
憶測は色々ありますが、事実をよく見直すことで、このような事故が減らせないのか検討してみました
遭難事故は色々な原因が重なって起こるのだと思います
- 天候
- ルート
- 装備
- 経験
- この日の登山の記録(ヤマレコ・ヤマップ)
この中で明確にわかっていることを調べてみました

天候(2023年10月6日)

この日の9時の天気図です10月ですが西高東低の冬型の気圧配置となっています

那須高原のアメダスです
午前中は曇時々晴れで風速も夜中に比べれば強くはなかった様子です
しかし那須高原と那須岳では天気は全く違います
那須岳は南北に稜線が連なっており、西からの強風をまともに受けることが知られています
冬型の気圧配置のときは、特に那須の稜線の天候は厳しいです
那須高原と那須岳の天候の違い


こちらは「てんきとくらす」から引用したものです
那須高原の実況と那須岳の予報を見ると
表高2000m付近の那須岳の予報では風が10m以上強くなっています
気温は4℃程度低くなっていることもわかります
実際の風を考慮すると体感気温は更に下がります
強風で動けず体温が奪われたていったことが予想できます
那須岳周辺の地図

遭難事故周辺の地図です
左下の峰の茶屋から剣ヶ峰そして、朝日岳の下の朝日の肩の間に4人の遺体がありました
地図で見るとわかりますが、西からの風を防ぐ場所が無いのが特徴です
剣ヶ峰の東側だけが唯一風を避けられる可能性が有ります

ヤマレコの標準タイムでみると、天候が良ければこの間は41分で通過できます
この日の午前中は天候が比較的安定したと考えると、あと1時間もしくは30分天気の急変が遅ければ事故は起こらなかったと考えられます
あっという間に強風が吹き、雨が降ってきたのでしょう
遭難された2つのグループの内1グループは前日三斗小屋に泊まり、早朝大峠から三本槍岳を通過して峠の茶屋に戻る予定だったようです
宿のご主人が天候が悪くなるので、別ルートを勧めたけれどもっと強く言えばよかったと残念がっていました
逆に言えば、午前中に戻ればなんとかなるという天気予報だったのでしょう・・・
装 備
装備については事実はわかりませんが、新聞では登山の服装で亡くなっていたとのこと
両方のグループともに山の経験は有るので、防寒具と雨具は装備していたと考えます
しかしこの時期はまだ紅葉の時期、もしかすると防寒着も冬用でなかった可能性は否めません
次の翌日に茶臼岳に登った方のヤマレコのコメントです
風が強く、雨も降っていて非常に寒かった。防寒対策が甘くて反省🤔朝日岳も予定していたが下山しました。山岳事故もあり4人も亡くなったとの事で
山岳救助隊の方も沢山おりました。山の天気は甘くみてはいけないと改めて思いました。
防寒対策が甘かったと反省していました
普段であれば3シーズン用の防寒着でも低体温症にまではならなかった可能性はあるでしょう
経 験
経験については何もわかりません
しかし、大阪から那須の三斗小屋温泉に泊まっているグループや60から70歳代のグループであったことから登山経験は豊富だったと考えられます
この日の登山の様子
ヤマレコの記録
ヤマレコには6日の登山のレポートは有りませんでした
7日も朝日岳は強風で諦めたとの記載が多く見られました
ヤマップの記録
ヤマップには6日は強風で撤退の文字が多く見られました
いくつかのコメントを記載します
午後から登山した方
普段、天気に恵まれないのでSCWや、やまやまGPVとにらめっこしているのですが、この日は雲の様子はよく大体晴れ予報だったので決行。 移動しながらてんくらがCになってることに気づき、風は強そうだけどなんでだろう?風ごときで?てんくら当たんないしなあ(失礼)と呑気に考えたのが全ての間違いだった。 強風を舐めてはいけない、今度から指標として大事にしようと思いました。
11時頃に峠の茶屋を出た登山者
あまりの爆風で稜線の峰の茶屋避難小屋で残念ながら撤退です。 三斗小屋温泉にも茶臼岳や朝日岳にも、まったくそれ以上先に進めないほどの風の状況。 この避難小屋で、となりの剣ヶ峰(朝日岳)で強風で滑落した登山者がいたので、救助要請の電話をしたと言う若い男性登山者が入ってきた。
ロープウェイ山頂駅から牛ヶ首まで行って戻った方
冬山装備じゃないけれどそれなりの山装備していても場所や状況により低体温症になることに全く不思議は感じない天候でした。
三斗小屋泊を目指して峰の茶屋で断念した方
三斗小屋温泉で1泊の予定でしたが、台風ですら経験したことのないほどの行動不能なレベルの強風のため茶臼岳の登頂は諦めました。 昼休憩後に、再度牛ヶ首方面から巻いて進もうとしましたが峠の茶屋到着前にやはり強風で立ち上がることもできずギブアップしました… 転倒して負傷された方もいたらしく、登山口ではレスキュー隊を見かけました。
結 論
まだまだ状況は詳しく解明できませんが、天気の「急変」の状況がもう少し緩かったら、もう少し遅かったらこの遭難事故は防げたのだと思います
以前に強風で動けない方を救助隊の方が一緒にビバークし助かったという記事を見ました
今回は救助隊も行けないほどの強風であったとのことです
這ってしか歩けないような強風と雨
那須岳が牙を向いたとしか言いようがありません
無くなった4名の方のご冥福をお祈り申し上げます
このような事故を防ぐために・・・

GPSを利用して位置情報の共有を行うことにより、救助作業が円滑になるのでは考えてみました
また、刻々とかわる天気の情報なども様々な登山天気アプリ等を活用してみませんか